インドネシア森羅万象

第17回「 ゴルカルと政治の季節」

代表的な日刊紙であるコンパス紙で「ゴルカル党の支持率、7.1%に低下」という記事を読んで、スハルト政権時代に同党の議員らと多少の交流を持った経験を思い返しながら、改めて時代の変化を感じた。しかし同党は今も政権の支柱であり政局の重要プレーヤーで…

第16回「ムルデカ」に込められた意味

私の日本での学生生活は70年安保と重なったこともあり、大学のバリケード封鎖や自主講座などの大波に揉まれているうちに、いつの間にか卒業していたような印象がある。それもあって、中部ジャワの大学キャンパス近くの下宿に落ち着いてからは、ちょっと別世…

第15回 「選挙と社会の行方」

民主主義は目的地ではなくプロセスそのものであるとよく言われる。国民が理想と考える国のあり方を実現するためのプロセスを民主主義と呼ぶのであれば、それぞれの国の事情や時代状況によって民主主義に様々なバリエーションが生まれるのも理解できる。 イン…

第14回 「独立記念日に思う」

毎年8月17日が近づくと町中が紅白の国旗で飾られ、様々な独立記念の行事で華やいだ雰囲気に包まれる。外国人である我々も少し心が浮き立つ気分になったものだ。今年の記念行事は例年の晴れやかさがさらに明るくなる趣向があったようだ。新聞やテレビが大きく…

第13回 「コメ問題にみるインドネシア」

久しぶりにちょっと溜飲が下がる記事に出会った。そこには、「政府の補助金を受けた安いコメを一般の普通米と混ぜ合わせ、それに不当に高い値段をつけて販売した業者が摘発され社長が逮捕された」と報じられていた。しかもその会社はスーパーのコメ売り場で…

第12回 「東ティモールを回想する」

今回はインドネシアの隣国に関わることについて書いてみたい。2002年、21世紀になって世界で初めて独立した東ティモール民主共和国のことだ。 東ティモールは、宗主国ポルトガルが1974年の政変で海外の植民地支配を放棄した結果、様々な独立の動きが加速して…

11回 「新たな『ブランタス・スピリッツ』を!」

「ブランタス・スピリッツ」と聞いて、独立インドネシアが最初に挑んだ河川流域総合開発プロジェクトを思い浮かべられる人は、インドネシアに住んでいる日本人の間でも少数派になっているかもしれない。 ブランタスとは言うまでもなくジャワ島東部、標高3000…

第10回 「教育への熱意」

学校の授業を週5日にして1日の授業時間を6時間から8時間に延長するという教育文化大臣の発表が思いのほか大きな反響を引き起こした。その多くは実施に慎重ないし反対の意見だ。子どもの負担が大きくなり過ぎる、踊りや音楽などの課外レッスンの時間がなくな…

第9回「インドネシア人と理屈っぽさ」(生々流転vol.17

インドネシアで最初の鉄道開通は日本より早い。これは知る人にはよく知られた歴史的な事実だ。新橋―横浜間の鉄道が正式開業したのは明治5年だが、その5年前の1967年に中部ジャワの中心都市スマランからタングンまでの26kmで初めて鉄道が開業し、明治5年には…

第8回「ラマダンに入って」(生々流転vol.15)

ラマダン(断食月)が始まった。ジョグジャカルタで暮らしていたころには、普段はイスラムと縁遠い生活をしていていたのに、ラマダンが始まると人々の暮らしの中から生まれる独特の雰囲気に新鮮な異国情緒を感じたものだった。 ジョグジャカルタの下宿はオラ…

第7回 『寛容な社会』の行先 (生々流転vol.12)

前回、アホック知事の宗教発言が何故あれだけの反発を招いたのかという疑問について一つの視点を紹介した。他方で、そのイスラム社会の激しい反発を目の当たりにして、多くの人々が強い危機感を抱き、民族的な多様性の尊重を訴える運動が大きく盛り上がった…

第6回「ムスリムが抱く恐怖心」(生々流転vol.10

長いジャカルタ州知事選挙だった。選挙戦直前にアホック知事がイスラムの聖典を引用したスピーチを行った後、あの発言は宗教の冒涜(ぼうとく)だと大騒ぎになってから半年余り、最後まで宗教に揺れ、宗教が勝敗を分ける選挙だった。 決選投票では、有権者の…

第5回「優しいインドネシア語」(生々流転vol.9より

インドネシア語は難しいか、それともやさしいか。インドネシア語と数十年も取り組んできた先輩がいまだに、完璧だと自信が持てるインネシア語を書くのに苦労していると述懐するのを聞いたりすると、その難しさを想像してため息が出る。 インドネシアのように…

第4回 「友好の指定席」(生々流転vol.7)

「様変わりだね~、見る影もない」。1970年代の終わりころにジャカルタで一緒だった日本人の友人が、十数年後に現地を再訪し、変貌した街並みを見て、そうもらした。その一言がなぜか頭に残っている。 その友人がジャカルタにいた頃は、独立広場から南北に伸…

第3回「汚職天国をめぐる攻防」(生々流転vol.5)

インドネシアには天国がふたつあると言われてきた。タバコ天国と汚職天国だ。 タバコ愛好家が我が物顔で紫煙をくゆらせても許された時代は過ぎ去りつつあるが、汚職は全く衰える気配が見えない。今年に入ってからだけでも、県の幹部への昇進や人事異動で県職…

第1回「なぜアホックは嫌われるのか?」

ジャカルタ州知事選挙は興味津々だった。特に面白かったのはアホック知事のキャラクターに対する市民の反応だ。人気があるようで、酷く嫌われている。非イスラム、華人系なのは仕方がないにしても、「あのガサツな話し方が許せない」という批判には、若い頃…